2011年3月11日に起きた地震、津波、そして原発事故。大地だけでなく、人の心も大きく揺さぶられたできごとでした。
カフェに集まっても、楽しいお喋りだけでは済まないようになり、いろいろなテーマについて話し合ったり、学んだりしてきました。けれど話すだけでは心もとなさを感じることもありました。個性を生かした取り組みをしている人も大勢いますが、ジャンルを超えた取り組みがなにかひとつできたら……。
唐突なようですが、5月にワタの種をまきました。和棉といって室町時代から明治時代にかけて、日本各地で育てられていた在来種の種を分けていただきました。また、埼玉県所沢市でヤギと羊を育てながら無農薬・無化学肥料による穀物や野菜を栽培し、自給自足を実践しているオギノエンファームさんに畑をお借りし、全面的な協力のもと、現在すくすくとワタが育っています。
議論のなかに足りなかったのは、お日さまの光を浴びながら、土を踏みしめること、植物や虫や鳥にぎゅっと近づいて過ごすこと、だったようです。思えば原発事故以来、土に触れるのも、外で長い時間過ごすのも、無意識のうちに避けていたかもしれません。
種をまいたからといって、いきなり衣類の自給自足ができるようになるわけではありません。でも、「生きていくのに必要なものを自分でつくる」ことは人間にとって基本的な営みだったはずです。種をまくことによって、そのあまりにも「あたり前」のことをすっかり見落として生きていることに気づいた、それがスタートです。
大きな問題にどのように対処していけばよいか、すっきりとした答えにはなかなか出会えませんが、私たちの願いはいつも至ってシンプルです。
すべての人が、安心して暮らすこと。
本来、あたり前とも思える根底の部分がぐらぐらと揺れてしまったので、ひとつずつ、丁寧に取り戻したいと思います。それらは現代の世の中において、震災以前にも手放して、忘れていたことかもしれません。
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